【予備試験頻出】参加承継と引受承継の違いを予備試験1桁合格者(民訴A評価)が解説。
この記事を読んで理解できること
- 【基本】(狭義の)訴訟承継とは
- 参加承継と引受承継の違い
訴訟承継には、相続や合併により権利義務が包括的に移転する当然承継と、係争物が第三者に移転する特定承継があり、このうち一般的に予備試験・司法試験に出題されやすいのは、特定承継です。
さらに、特定承継は、参加承継と引受承継に分類されます。
初級者は「訴訟承継」とくくってしまいがちで、参加承継と引受承継の状況の違いを理解せずにいる人も多いです。
予備試験でもこの違いが問われていますから、受験生は必ず理解していなければなりません。
本記事では、予備試験で民訴A評価(総合1桁順位)を取った筆者が、参加承継と引受承継の違いを誰よりも分かりやすく解説したいと思います。
第1章 【基本】(狭義の)訴訟承継とは
訴訟継続中に訴訟の対象となる係争物を第三者に譲渡した場合に、係争物の譲受人が参加する参加承継と前主(譲渡人)の相手方当事者が譲受人を訴訟に引き込む引受承継に分けられます。
既に行われている訴訟についての既判力は訴訟継続中の係争物の譲受人には及びません(民訴法115条1項3号)。
しかし、訴訟継続中の譲受人は、前主の訴訟状態が有利ならその状態を自分にも及ぼしたいと思うはずです。
そのような場合に、前主の訴訟が自己に有利な場合に訴訟参加して、勝訴判決を取得しようとするものが参加承継です。
他方、自己に有利な判決を相手方の譲受人に及ぼすために訴訟状態を引き受けさせるために引受承継は行われます。
第2章 参加承継と引受承継の違い
1 参加承継
(1)承継前の訴訟状態への拘束
参加承継人は承継原因発生時から参加承継時までにされた訴訟行為の結果に拘束されます。
これを認めなければ従前の訴訟が無駄になり訴訟不経済となりますし、相手方にとっても従前の訴訟状態を流用してもらうことはメリットがあるからです。
また、承継人も既存の訴訟状態が自分に有利と思うから参加する以上、訴訟状態が承継されなければ意味がありません。
理論的には、訴訟継続中はいわば「形成中の既判力」のようなものが観念でき、訴訟継続中の権利承継により、かかる「形成中の既判力」が移転したと考えることができるでしょう。
ですので、基本的には、従前の訴訟状態が承継人にとって不利であろうが、従前の訴訟状態が承継されることになると思います。
(もちろん、この結論を修正することは可能ですが、承継人は自らリスクなどを引き受けて参加することを決定する以上、かかる結論は妥当性を有します。これとの対比が引受承継となっていることを理解してください。)
(2)参加承継後の訴訟行為
参加承継は、独立当事者参加(47条)を使って行われます(49条・51条)。
(権利承継人の訴訟参加の場合における時効の完成猶予等)
第四十九条
訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたことを主張する者が第四十七条第一項の規定により訴訟参加をしたときは、時効の完成猶予に関しては、当該訴訟の係属の初めに、裁判上の請求があったものとみなす。
(義務承継人の訴訟参加及び権利承継人の訴訟引受け)
第五十一条
第四十七条から第四十九条までの規定は訴訟の係属中その訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したことを主張する第三者の訴訟参加について、前条の規定は訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けた場合について準用する。
そして、47条4項は必要的共同訴訟の審理手続の条文である40条1項以下を準用します。
(独立当事者参加)
第四十七条
第四十条第一項から第三項までの規定は第一項の訴訟の当事者及び同項の規定によりその訴訟に参加した者について、第四十三条の規定は同項の規定による参加の申出について準用する。
(必要的共同訴訟)
第四十条
訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。
したがって、承継人は、参加承継前の訴訟状態は承継するが、参加承継後は前主の訴訟行為が承継人にとって不利な場合は、当該訴訟行為は「全員の利益」にならないため、その効力は承継人に及ばないことになります。
①参加承継前:承継人に不利な訴訟状態も承継
②参加承継後:承継人に不利な訴訟行為がされた場合は効力が及ばない
が基本的な考えとなります。
2 引受承継
(1)承継前の訴訟状態の承継:例外あり
参加承継の場合、自ら従前の訴訟状態を利用して自らの意思で参加する訳ですから、訴訟状態の承継が認められるのは当然と言えます。
他方、引受承継の場合は、自分の意思で参加するのではなく、相手方に訴訟に引き入れられることになりますので、訴訟状態を承継しないと考える見解もあります。
(訴訟状態を承継しないという見解を取りたいという人を否定するつもりはありません。)
しかし、一般的には、訴訟承継という制度は訴訟状態の承継を前提とした制度である以上、引受承継であるからといって訴訟状態の承継を一般的に否定することはできないと思われます(同趣旨は『民事訴訟法概論』(高橋宏志著))。
しかし、参加承継とは異なり自らの意思で参加する者ではないという観点から、自白の効力などは否定する見解を取るのが落ち着きのいい見解となります。
(この辺は、自白の論点にもなりますので、別途記事で解説したいと思います。)
覚えておいてほしいのは、
訴訟引受は、参加承継と異なり自ら参加する訳ではないので、訴訟状態の承継に修正が入りやすい
ということです。
(2)引受承継後の訴訟行為
引受承継の場合は、共同訴訟参加の規定(47条)が準用される参加承継と異なり、同時審判申出共同訴訟の規定(41条1項以下)が準用されます。
(義務承継人の訴訟引受け)
第五十条
訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。
2 裁判所は、前項の決定をする場合には、当事者及び第三者を審尋しなければならない。
3 第四十一条第一項及び第三項並びに前二条の規定は、第一項の規定により訴訟を引き受けさせる決定があった場合について準用する。
(同時審判の申出がある共同訴訟)
第四十一条
共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
2 前項の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。
3 第一項の場合において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。
そして、同時審判申出共同訴訟は通常共同訴訟ですので、原則どおり共同訴訟人独立の原則(39条)が適用され、他の共同訴訟人が行った行為は承継人に及ぶことはありません。
(共同訴訟人の地位)
第三十九条
共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。
以上、訴訟引受についてまとめますと、
①引受承継前:承継人に不利な訴訟状態も承継(自白は除く)
②引受承継後:共同訴訟人の全ての訴訟行為が承継人に及ばない(39条)
第3章 まとめ
以上の内容をまとめます。
・当然承継
・特定承継(参加承継と訴訟引受)←出題されやすい!
【参加承継】
・独立当事者参加を使って行われる。
・必要的共同訴訟の規定が準用される。
【引受承継】
・当事者の申立てにより、決定で行われる。
・同時審判申出共同訴訟の規定が準用される。
【承継前】
・参加承継前→承継人に不利な訴訟状態も承継
・引受承継前→承継人に不利な訴訟状態も承継(自白は除く)
【承継後】
・参加承継後→承継人に不利な訴訟行為がされた場合は効力が及ばない
・引受承継後→共同訴訟人の全ての訴訟行為が承継人に及ばない
ここまでの基礎を固めて、出題されたら瞬時に見分けられるようにしましょう。
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