【完全保存版】窃盗と詐欺の区別を決める3つの要素とは?知っておくべき3つの裁判例の解説【占有の弛緩、交付意思】

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
【完全保存版】窃盗と詐欺の区別を決める3つの要素とは?知っておくべき3つの裁判例の解説【占有の弛緩、交付意思】
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チェック
この記事を読んで理解できること
  • 刑法において被害者の主観を検討する特別性に着目せよ
  • 【基本確認】窃盗と詐欺の区別の論点:交付意思の有無
  • 裁判例を読んで解法を作る
  • 平成26年予備試験刑法で実践

窃盗と詐欺の区別は予備試験や司法試験でも頻出なのですが、二桁合格者レベルでも大したあてはめを出来ている人はほとんどいません。
しっかりと出題趣旨として点数がふられていることが多いので、ここのあてはめをしっかりできる人は、高い得点を獲得できます。

そこで、しっかりと原理原則から理解することで、この「窃盗と詐欺」「交付意思」「占有の弛緩」の論点で満点を取ってしまいましょう。

この記事を読むことで、予備試験トップ合格レベルの「窃盗と詐欺の区別」の知識が手に入るような記事にしたいと思っております。

基本的な論証を知っている人にとっては、第1章、第2章は基本的な話にとどまりますので、実践的な解法を知りたい人は、第3章から先に読んでも問題ないようにしたいと思っております。

【中級】第1章 刑法において被害者の主観を検討する特別性に着目せよ

いきなり論点解説に入る前に、このことを知っておいてほしいのですが、刑法は責任主義をとりますので、当事者の主観(故意)が極めて重要となります。

ですので、刑法総論は実行行為者の認識についてひたすら極める学問となっているのです(共犯論もまさにその一つです)。

しかし例外的に、受験レベルの刑法において、実行行為者ではなく被害者の主観を問題とするものが二つあります。

それが、

被害者の主観の問題

①被害者の承諾(刑法202条含む)
②詐欺罪(と恐喝罪)

です。

民事においては私的自治ですから、当事者双方の主観が対等に大事ですが、刑法においては被害者の主観を検討することは極めて例外の事態なのです。
逆に言うと、試験対策としては、例外的な「被害者の主観」が問題文で出てきた場合は、注意して読まなければなりません。

あえて結論をいうと、

解法

詐欺罪の問題で、問題文に被害者の主観が出てきたら、交付意思の論点(「窃盗と詐欺の区別」)を疑え!

ということになります。
あまりにも当たり前なのですが、欺罔行為っぽい事実と被害者の主観が問題文にあった場合、あまりにも詐欺罪と簡単に認定してしまう人が多すぎるのです。

そのような雑な処理をしていてはいつまでも刑法で安定的にA判定をとることはできません。
刑法でA評価を安定的に取れない受験生は、欺罔行為が存在するとすぐ詐欺罪を肯定してしまいます。はっきり言ってこれでは、何百問問題を解いても無意味です。

そのような人は詐欺罪の問題では常に「窃盗と詐欺の区別」を検討するくらいのつもりでやった方がいいと思います。

【初級】第2章 【基本確認】窃盗と詐欺の区別の論点:交付意思の有無

1 被害者の交付意思の有無が分水嶺である

まず、詐欺罪が成立するためには、錯誤に陥った被欺罔者による交付行為が必要です。
「交付行為」は「行為」である以上、被害者の意思に基づく必要があります。

他方、窃盗罪の構成要件は「窃取」(意思に反した占有の移転)ですから、被害者の意思に基づかない場合は窃盗罪が成立します。

したがって、交付意思があるかないかが、窃盗罪と詐欺罪の区別の分水嶺になるというわけです。

分水嶺

被害者の交付意思の有無が、窃盗罪と詐欺罪を分ける分水嶺となる。

2 典型的な例

刑法の学習は、憲法以上に裁判例や典型例を覚えることが重要です。

以下の例は覚えてしまってください。

典型例

被害者の隙を見て財物を持っていった場合は。窃盗罪が成立する。

例えば、試着を申し込んで、試着した服を店員の目を盗んで、服を着たまま店外に逃走する場合を想像してください。

実行行為者の欺罔により、被害者に隙が発生し、その隙に乗じて財物を持って行った場合は、「被害者が財物の占有移転を容認していない」ため、交付意思が否定されます。

交付意思とは、「占有が移転する状況の認識・認容」のことです。

この事例は、事例・結論・理由を全てセットで覚えてしまってください。
受験生としては解法として以下の議論をしっかり覚えてください。

解法

詐欺罪成立のためには、「占有が移転する状況の認識・認容」(交付意思)が必要である。

3 占有の弛緩と占有の移転

交付行為は、占有の移転に向けられている必要があります。
したがって、占有状態を不安定にするだけの行為は「占有の弛緩」と呼ばれ、「占有の移転」には至っていませんから、詐欺罪の交付行為とは評価されません。

先ほどの試着の例も、店員の認識は「試着させる」にすぎませんから、「占有の弛緩」の意思しかありません。商品である服を客に移転することまで「認識・認容」していませんので「占有の移転」の意思は存在しないため、詐欺罪は成立しないのですj。

何度も強調しますが、盗むつもりで「試着したい」と申し向けることを「欺罔行為」と考えて簡単に詐欺罪を認定する人が二桁合格者レベルでもたくさんいるという恐ろしさに気づいてください。

実際の試験現場では、被害者の認識が「占有の弛緩」にとどまるか「占有の移転」に至っているか悩ましい問題が出題されます。

その場合は、単に論証を知っているだけでは太刀打ちができず、裁判例を読み込んで、問題文から拾うべき要素をある程度あたりをつけている必要があります。

そこで第3章においては、裁判例を消化ししながら、「詐欺と窃盗の区別」の論点の実践的な解法を整理したいと思います。
第3章が本記事の山場となっていますので是非読んでくださいね。

【中級】第3章 裁判例を読んで解法を作る

1 プラスの要素とマイナスの要素を両方指摘する

本来は、1項詐欺と2項詐欺を分けて論じたほうが正確なのですが、受験生的には同時に見て解法化してしまったほうがよいので、以下1項詐欺と2項詐欺を同じ文脈で解説します。

ポイントは基本的な裁判例3つで予備試験・司法試験9割5五分以上の問題に対応できます。
詐欺と窃盗の区別の裁判例は【3つ】と覚えてください。

裁判例で、占有の弛緩方向に働く事実と占有の移転方向に働く事実を理解して、実際の問題ではどちらに近いかを分析するのです。

裁判例、占有の弛緩方向に働く事実と占有の移転方向に働く事実を理解

2 知っておくべき3つの裁判例

結論からいうと、覚えておくべき裁判例3つは、大きく二つに分けられます。

それは、「無銭宿泊事例」×2と「試乗乗り逃げ事例」となります。

まず、宿泊型ですが、以下の二つの「事例と結論」の違いを暗記してしまってください。

(1)無銭宿泊事例

(事例)外に出るときの発言 (結論)
「今晩必ず帰ってくるから」
(東京高判昭和33年7月7日)
2項詐欺罪成立
「友人を見送る」
(最判昭和30年7月7日)
2項詐欺罪不成立

この場合、無銭宿泊をするつもりで、従業員や旅館主に嘘をついたことには変わりはないのに、結論が正反対です。いずれの従業員も「宿泊代金の免除」の意思までは有していません。
この違いは、以下のように理由づけることができます。

交付行為者の「監視の及ぶ範囲」か否かです。具体的には、被害者の認識した距離的範囲です(あくまで、「被害者の認識」上の距離であることには要注意)。

交付行為者の「監視の及ぶ範囲」

「友人を見送る」事例(上図青色)は、友人を見送るのは店先であるところ、店先であれば従業員の監視が及ぶ範囲と評価することができます。

他方、

「今晩帰ってくる」事例(上図赤色)は、被告人が代金を生産精算することなく自由に外出することを容認しています。実際、店先を超えてあまりにも遠いところまで行くこと自体は容認していることをもって、「利益の弛緩」にとどまらず「利益の移転」の認識に至っています。
ここでは、「債務の履行を事実上免れうる状況」を認識していた場合に、「利益の移転」の認識・認容があったと考えるわけです。

このように被害者の認識した「距離的範囲」を問題では検討することになります。

(2)試乗乗り逃げ事例

こちらも有名な事例ですが、東京地八王子支判平成3年3月28日を紹介します。
試乗者を乗り逃げする意図を隠して、自動車販売店の営業員に対して市場を申し込んで、単独試乗の許可を得て、そのまま乗り逃げした事例です。

この場合、以下のように判示されています。

・東京地八王子支判平成3年3月28日

「添乗員を付けないで試乗希望者に単独試乗させた場合には、たとえ僅かなガソリンしか入れておかなくとも、被告人が本件でやったように、試乗者においてガソリンを補給することができガソリンを補給すれば試乗予定区間を外れて長時間にわたり長距離を走行することが可能であり、また、ナンバープレートが取り付けられていても、自動車は移動性が高く、前記二1で認定のとおり、殊に大都市においては多数の車輌に紛れてその発見が容易でないことからすれば、もはや自動車販売店の試乗車に対する事実上の支配は失われたものとみるのが相当である。」

ガソリンの僅かさ ⇒ 認識する距離的範囲を意味
ナンバープレート ⇒ 追跡可能性を意味

それに対して、

補給できる以上、距離的に遠いところまで行き得ることの認識
移動性の高さ(「車」の特殊性)や発見の困難さ(追跡不可能性)

と反論しています。

・車の試乗事例(暗記必須)

補給すれば長時間・長距離走行できる 僅かなガソリン
移動性が高い ナンバープレート
多数の車両に紛れて発見困難(大都市)

(+が交付意思を認める方向の事情、-が否定する方向の事情)

この事例の上記の表は暗記すべきです。

以上より、無銭宿泊事例と試乗乗り逃げ事例で裁判例が気にしているところを抽象化して解法化すると以下のようになります。

交付意思の有無

交付意思の有無は、以下に関する事情を問題文から指摘せよ!

①被害者の許容する距離的範囲 例:店先か否か、ガソリンの有無
②管理・把握可能性 例:ナンバープレート、行為の場所(被害者の家、ホテル等)
③目的物の性質 例:「車」の移動性、動産か不動産か、財物の小ささ

なお、③でも記載したとおり、目的物の大きさ・運搬の容易性については指摘したいところです。

東京高判平成12年8月29日は、テレホンカードを注文し受け取ったあと、「今若い衆が外で待っているから、これを渡してくる。お金を今払うから、先に渡してくる」と述べ、外にでたまま自転車で逃走した事例ですが、詐欺罪の成立が認められています。

①距離的範囲でいうと店先なので「占有の弛緩」にすぎないとも思われますが、おそらく③テレホンカードの運搬容易性に鑑みて、遠いところに行ってしまう可能性を認識していたとして、交付意思が認められた事例であると考えられます。
(ただし、窃盗罪と構成する余地も十分にあると思われます。)

【中級】第4章 平成26年予備試験刑法で実践

ここからは、解法を用いて実際の事例問題を解いていきましょう。

・平成26年司法試験予備試験問題 刑法
https://www.moj.go.jp/content/000125210.pdf

(事案の概要)
甲は、Vが密輸入された仏像を所有していることを知り、売買を装いつつ、代金を支払わずにこれを入手しようと考えた。

甲は、偽名を使って身元が明らかにならないようにしてVと交渉し、その結果仏像の代金は2000万円と決まり、ホテルの一室で受渡しを行うこととなった。

甲は、後輩の乙に、具体的な計画を伝えることなく仏像の持ち去り役を依頼した。

Vは一人で受渡し場所であるホテルの一室に行き、甲も乙を連れて同ホテルに向かい、甲一人でVの待つ室内に入った。甲は、Vに対し、「近くの喫茶店で鑑定人が待っているので、まず仏像を鑑定させてくれ。本物と確認できたらここにある金を渡す。」と言い、2000万円が入っているように見せ掛けたアタッシュケースを示した。Vは、代金が準備されているのであれば、先に仏像を引き渡しても代金を受け取り損ねることはないだろうと考え、仏像を甲に引き渡した。

甲は待機していた乙を室内に招き入れ、仏像を手渡したところ、乙は風呂敷で仏像を包み、甲からの指示どおりそのままホテルを出て、タクシーに乗って自宅に帰った。

乙がタクシーで立ち去った後、甲は代金を支払わないまま逃走しようとしたが、Vはその意図を見破り、甲の逃走を阻んで、護身用に持ち歩いていたナイフで甲を脅した。

まずは解法をおさらいします。

解法

詐欺罪の問題で、問題文に被害者の主観が出てきたら、交付意思の論点(「窃盗と詐欺の区別」)を疑え!

この問題文では、被害者であるVについて、「代金が準備されているのであれば、先に仏像を引き渡しても代金を受け取り損ねることはないだろう」という主観が明示されています。

さらに、仏像を引き渡す前の交渉経緯やホテルでの甲とのやり取りも詳細に記載されているため、Vの主観を推認できる事情が散りばめられています。

このことから、本件ではVの交付意思が論点になるということが分かります。

解法

詐欺罪成立のためには、「占有が移転する状況の認識・認容」(交付意思)が必要である。

では、Vは仏像の占有が移転する状況を認識・認容していたといえるでしょうか。

ここで重要なのは、「実際に何があったか」だけでなく、「Vはどう思っていたのか」を検討する必要があるということです。

例えば、「近くの喫茶店で鑑定人が待っている」というのは甲の嘘ですが、Vがそのように認識していたのであれば、Vの主観である「近くの喫茶店で鑑定人が待っている」ことを前提に、占有の移転を認識・認容していたか検討する必要があるのです。

交付意思の有無

交付意思の有無は、以下に関する事情を問題文から指摘せよ!

①被害者の許容する距離的範囲 例:店先か否か、ガソリンの有無
②管理・把握可能性 例:ナンバープレート、行為の場所(被害者の家、ホテル等)
③目的物の性質 例:「車」の移動性、動産か不動産か、財物の小ささ

では、具体的な事情を検討していきましょう。

【①被害者の許容する距離的範囲】
甲はVに対し、「近くの喫茶店で鑑定人が待っているので、まず仏像を鑑定させてくれ。」と発言し、Vは甲の言うとおり仏像を引き渡しているので、Vが許容していた仏像の移動範囲は「近くの喫茶店まで」ということになります。

この事情はどのように評価できるでしょうか。
(交付意思を肯定する方向の事情は赤字、否定する方向の事情は青字にします)

まず、「近くの」喫茶店である以上、距離的にはそれほど遠くではない、つまりある程度は追跡できる範囲だったという評価があり得ます(あてはめをするときは、このように当たり前のことからしっかり指摘していきましょう)。

他方、ホテルの外に出ることは許容している以上、Vが監視できる範囲を越えており、容易に追跡することもできない場所まで仏像を移すことは認容していたといえます。


【②管理・把握可能性】
甲は、鑑定人という第三者がいる場所に、仏像の鑑定という目的で移動させる認識であったことから、完全に甲の支配下に移すのではなく、中立的な第三者が一時的に確認するだけという認識であったという評価もあり得ます。

しかし、ここでおかしいとは思いませんか?
鑑定が目的であれば、鑑定人をその場に連れてくるか、少なくともホテルのロビーなどで待たせておけばよいのであり、喫茶店で待機させる合理的理由がありません

にもかかわらず、Vは鑑定人を連れてくるように要求することなどはせずに仏像を渡していることから、合理的な範囲を超えて仏像を移動させることを認容していたと評価することができます。

また、甲は偽名を使ってVと交渉していたので、Vは甲の身元を知りません

Vは、甲が偽名を使っていることまでは知らなかった可能性もありますが、少なくとも事前に身元の確認をしていなかったことは明らかなので、甲を追跡することは困難であったといえます。


【③目的物の性質】
本件の目的物は仏像であり、手に持って運ぶことができる動産です。
密輸入品であり、どこにでもあるようなありふれたものではないため、他の物と見分けがつかなくなることまではなさそうですが、一度外まで持ち出されたら、Vが追跡することは困難であったといえます。

他方、この仏像は事前に代金が2000万円に決まっており、Vは甲から2000万円が入っているように見せ掛けたアタッシュケースを示されています。

それによって、Vは「代金が準備されているのであれば、先に仏像を引き渡しても代金を受け取り損ねることはないだろう」と考え、仏像を引き渡しました。

そうすると、Vとしては、甲がわざわざ代金を持ってきている以上、取引を白紙にするような行動には出ないだろうと期待していたと推認されますので、Vの主観としては一定の監視は及んでいるという認識だったとも考えられます。

もっとも、Vはアタッシュケースを示されただけで中身を確認しようともしていないので、代金のこともそれほど深く考えていたわけではなく、仏像を監視下に置いているという強い認識まではなかったことが推認されます。


【その他特殊事情】
このほかに、本件に特有の事情を説明します。
上記①~③だけでも問題なくA評価ですが、以下も指摘できれば完璧です。

本件の特殊事情とは何かわかりますか?
答えを見る前に、一度考えてみてください。

では、答えを言いましょう。

甲がその場にとどまっていることです。
これまでに紹介した裁判例は、「今晩必ず帰ってくる」にせよ「友人を見送る」にせよ、犯人がその場を離れることが前提となっています。
しかし本件では、甲はホテルの室内という密室にとどまっているのです。
だからこそ、Vは仏像を持って逃げられることなどないだろうと認識していたものと考えられます。

さらに、もう一つ特殊な事情があります。
Vがナイフを用いていることです。
問題文では、「護身用に持ち歩いていた」という説明しかありませんが、それにしてはVは甲が逃げようとした瞬間にそれを止めて、ナイフを脅しの道具として的確(という表現が的確か分かりませんが)に利用しています。
このようなVの対応を見る限り、Vは当初から甲を逃がさないつもりでいたということが推認されます。

他方、占有移転の認容を肯定する方向の特殊事情もあります。
協力者の乙がその場にいたことです。

甲は仏像の引渡しを受けた後、ホテルの室内に乙を招き入れ仏像を手渡し、乙は風呂敷で仏像を包みその場を去っています

Vとしては、乙が仏像を持ち去ってしまうかもしれない状況をその場で見ていましたが、特に何も言うことはなく、乙がタクシーで立ち去った後、甲が逃げようとした段階で初めて行動に出ています。

そうすると、Vは仏像を甲の協力者の支配下に移すことを認容していたと評価することができるでしょう。

以上の内容を表にまとめます。

関連する考慮要素は隣り合わせにしているので、比較しながら確認してみてください。

ホテルの外に出る
Vが監視できる範囲を越えている
近くの喫茶店
距離的にそこまで遠くではない
鑑定人をホテルに連れてこさせない
合理的な範囲を超えた移動を認容している
鑑定目的
中立的な第三者が一時的に確認をするだけ
甲は偽名を使っている
身元不明のため追跡が困難
Vは、甲が偽名を使っていることは知らなかった可能性あり
目的物は仏像
手に持って運べる動産のため、追跡が困難
仏像は密輸入品
他の物と見分けがつかなくなることはない
Vはアタッシュケースの中身を確認していない
代金を直接確認してから引き渡そうと考えていなかった
甲はVに代金が入っていると見せ掛けたアタッシュケースを示した
代金が準備されているのだから逃げるつもりはないだろうという認識
仏像が乙に手渡され、乙が立ち去った
甲の協力者の支配下に移すことを認容
甲がその場にとどまっている
逃げられることはないという認識
Vは甲が逃げようとしてから初めて行動に出た
乙を逃がさないようにはしていない
Vがナイフを使っている
当初から甲を逃がさないつもりだったと推認される

ここまでの事情を指摘、評価することができれば、結論がどちらになろうとも全く問題ありませんが、詐欺罪を認めた方が落ち着きが良いように思われます。

第5章 まとめ

以上のとおり、窃盗と詐欺の区別は予備試験にも出題されている重要論点ですが、まともにあてはめができる人は非常に少ないです。

事案の処理において大事なことは「結論がどちらなのか」ではなく、「どのような事情をどのように評価できるのか」をきちんと示すことです。

その中でも有名な裁判例の考慮要素は、本番でとっさに対応できるようにここで暗記してしまいましょう。

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動画①では、「判例の射程とは何か」を予備試験の過去問を題材にしながら分かりやすく解説します。この解説を聞いた受講生からは「判例の射程の考え方・書き方がようやくわかった!」との言葉をいただいております。

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動画③では、どの予備校講師も解説をぼやかしている生存権の解法を明確にお渡しします。

そして、動画④では③の生存権の解法パターンを使って、難問と言われた司法試験の憲法の過去問の解説をします。
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