- 公開日:2024.12.05
- 更新日:2024.12.05
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固有必要的共同訴訟と通常共同訴訟の区別を徹底解説【司法試験・予備試験】
目次
この記事を読んで理解できること
- 【初級】第1章 固有必要的共同訴訟とは何か
- 【初中級】第2章 共同所有と固有必要的共同訴訟
- 【中上級】第3章 遺産に関する紛争と固有必要的共同訴訟
あなたは、
- 固有必要的共同訴訟と通常共同訴訟を区別できるようになりたい。
- 固有必要的共同訴訟となる理由をきちんと説明できるようになりたい。
- 固有必要的共同訴訟に関する判例を理解したい。
とお考えではありませんか?
固有必要的共同訴訟は、司法試験でも予備試験でも頻出の論点ですが、しっかりと理解できている人は少ないという印象です。
理論的な裏付けも含めて分かっていないと、未知の問題や判例の事案をひねった問題が出てきたときに対応することができません。
そこで、今回は
<初級>
第1章で固有必要的共同訴訟とは何かを説明した上で、
<初中級>
第2章で共同所有と固有必要的共同訴訟について解説し、
<中上級>
第3章で遺産に関する紛争と固有必要的共同訴訟について解説します。
第1章は基礎的な話ですので、本題に入りたい方は第2章から読んでいただいても問題ありません。
この記事を読んでいただければ、事例問題にも慌てることなく対応できるようになります。
ぜひ最後まで読んでみてください。
【初級】第1章 固有必要的共同訴訟とは何か
この章では、固有必要的共同訴訟とは何かを説明します。
基本的な事項の確認ですので、本題に入りたい方は第2章から読んでいただいても問題ありません。
まずは条文を確認しましょう。
(必要的共同訴訟)
民事訴訟法40条1項
訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。
このように、共同訴訟のうち、合一確定の必要のある共同訴訟を必要的共同訴訟といいます。
その中でも、関係者全員が原告かつ被告となっていなければ当事者適格を充たさないという類型の共同訴訟を、固有必要的共同訴訟といいます。
|
合一確定の必要 | 訴訟共同の必要 |
---|---|---|
通常共同訴訟 | なし | なし |
類似必要的共同訴訟 | あり | なし |
固有必要的共同訴訟 | あり | あり |
類似必要的共同訴訟(合一確定の必要あり、訴訟共同の必要なし)は、株主総会決議取消しの訴えや債権者代位訴訟など類型が限られているので、基本的に問題となるのは
(合一確定の必要なし、訴訟共同の必要なし) vs 固有必要的共同訴訟 (合一確定の必要あり、訴訟共同の必要あり) |
の区別です。
このように、固有必要的共同訴訟は、
- 合一確定の必要
- 訴訟共同の必要
の2つがポイントになります。
【初中級】第2章 共同所有と固有必要的共同訴訟
固有必要的共同訴訟は、
- 他人間の法律関係に変動を生じさせる訴訟
- 数人で管理処分・職務執行をする場合
- 共同所有にかかわる紛争
の3種類に大別されます。
その中でも特に問題となりやすいのは、
3.共同所有にかかわる紛争
です。
詳しく見てみましょう。
【初級】2-1 共有権vs持分権
まず、絶対に押さえる必要があるのが共有権と持分権です。
結論から言うと、
|
となります。
上の図からわかるように、共有権は当事者全員に共通する権利です。
そのため、例えばAが共有権確認の訴えを提起して勝訴し、Bが別訴を提起して敗訴した場合、
|
という矛盾判決が生じてしまいます。
そのため、合一確定と訴訟共同の必要があるのです。
他方、持分権の場合、各自の権利を行使しているだけですので、Aが勝訴しようと敗訴しようと、他の共有権者には影響がなく矛盾判決のおそれはありません。
【中級】2-2 抹消登記請求vs移転登記請求
次に押さえる必要があるのが、抹消登記請求と移転登記請求です。
これも結論から言うと、
|
となります。
ここでは、AとBが共同で所有する土地について、AがCに訴えを提起したケースを考えましょう。
- 抹消登記請求
まず、所有権移転登記抹消登記手続請求の場合、実体に即していない登記を抹消するだけなので、保存行為に該当します。
そして、不動産の共有者の一人は持分権に基づき、単独で保存行為が可能です。
(共有物の管理)
民法252条5項
各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
したがって、抹消登記請求は通常共同訴訟に該当します。
ここまで書ければ答案としては十分ですが、さらに実質的な理由を補足します。
抹消登記請求は、もともとAとBの共有であった登記がCに移転したので、それを抹消するというものです。
そのため、移転登記が抹消された場合、登記上はもとのAとBの共有に戻ります。
このように、単独で行使しても登記と実体法上の法律関係が一致するため、問題がないのです。
- 移転登記請求
これに対し、所有権移転登記手続請求の場合、持分権の範疇を超えているため、各共有者が単独で行使することはできません。
仮にAが単独で行使できるとすると、もともと登記になかった共有権を新たに記載することになるので、Bが参加しないままだと持分権などが実体法上の法律関係と一致しないおそれがあります。
また、Bは無視してAの分だけ移転されることにしても、登記簿上AとCの共有という実体法上の法律関係が一致しない結果となってしまいます。
したがって、移転登記請求は固有必要的共同訴訟となります。
以上が固有必要的共同訴訟の基本的な考え方です。
次の章では、応用的な問題も含めて検討します。
【中上級】第3章 遺産に関する紛争と固有必要的共同訴訟
この章では、遺産に関する紛争を中心に解説します。
だんだん難しくなってきますが、噛み砕いて説明するのでご安心ください。
【中級】3-1 遺産確認、相続人地位不存在確認
まず、代表例として挙げられるのが
- 遺産確認の訴え
- 相続人の地位不存在確認の訴え
の2つです。
結論から言うと、どちらも固有必要的共同訴訟に該当します。
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理由は、第2章で説明した共有権の確認と同じく、当事者全員に共通する権利であるからです。
例えば、甲土地についての遺産確認の訴えを各自が提起し、Aは勝訴してBは敗訴したら、同じ土地なのにAとの関係では遺産であり、Bとの関係では遺産ではないという矛盾判決が生じてしまいます。
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また、Cが相続人ではないという相続人の地位不存在確認の訴えを各自が提起した場合も、同様に矛盾判決のおそれがあります。
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したがって、合一確定の必要と訴訟共同の必要があり、固有必要的共同訴訟に該当します。
【上級】3-2 遺言無効の確認
ここからは上級編として、遺言無効確認の訴えについて考えてみましょう。
これも結論から言うと、判例(最判昭和56年9月11日)は、通常共同訴訟としました。
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しかし、ここまでの話をよく読んでくださった方なら、それはおかしいと思うのではないでしょうか。
各自が遺言無効確認の訴えを提起した結果、Aは勝訴してBは敗訴したら、遺言はAとの関係では無効、Bとの関係では有効ということになってしまいます。
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このように矛盾判決のおそれがある以上、合一確定の必要と訴訟共同の必要が認められるはずです。
では、なぜ判例は通常共同訴訟としたのでしょうか?
この点について、「判例の事案は特殊事例である」という見解が有力となっています。
判例の事案は、共同遺言であったために無効確認の訴えが提起されたというものでした。
ここで、民法の条文を読んでみましょう。
(共同遺言の禁止)
民法975条
遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
共同遺言は条文で禁止されているので、無効となることは明らかです。
そうすると、相続人のうち誰が訴えても、民法975条により無効という結論は変わりません。
そのため、本件に限っては矛盾判決のおそれがないので、合一確定及び訴訟共同をするまでもないということです。
このように、判例の結論が原則的な理論と異なる場合、「特殊事例ではないか」ということを疑う必要があります。
例えば、司法試験の場合、判例とは異なる事案において、判例の射程が及ぶかどうかを検討するような問題が出る可能性もあるので注意が必要です。
第4章 まとめ
以上のとおり、固有必要的共同訴訟は
- 合一確定の必要
- 訴訟共同の必要
の2つが重要なポイントになります。
紛争ごとに結論をまとめると以下のとおりです。
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この記事を読み込んで、ぜひマスターしましょう。
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