憲法入門1 憲法答案の書き方 三段階審査と違憲審査基準

監修者
講師 赤坂けい
株式会社ヨビワン
講師 赤坂けい
憲法入門1 憲法答案の書き方 三段階審査と違憲審査基準
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この記事を読んで理解できること
  • 憲法答案の書き方(三段階審査)
  • 違憲審査基準の定め方
  • 違憲審査基準の種類

あなたは、

  • 憲法の答案をどう書けばいいのか知りたい
  • 三段階審査とは何かを知りたい
  • 違憲審査基準とは何かを知りたい

などとお考えではないでしょうか?

憲法は条文の数が少なく内容が抽象的なので、判例や学説、あるいは「暗黙のルール」で成り立っている部分が少なくありません。

そこでこの記事では、初学者の方にも理解していただけるように、

第1章で憲法答案の書き方(三段階審査)について、

第2章で違憲審査基準の定め方について、

第3章で違憲審査基準の種類について、

それぞれわかりやすく解説します。

憲法を学び始めたばかりの方はもちろん、学習が進んだ方のまとめ用にも最適ですので、ぜひ最後まで読んでみてください。

第1章 憲法答案の書き方(三段階審査)

憲法の事例問題の多くは、何らかの法令(法律や条例)が登場し、その法令が憲法に反するかどうか(合憲か違憲か)が問われることになります。

そこで登場するのが「三段階審査」という考え方です。

簡単に説明すると、

1 問題になりそうな自由が、憲法上保障されているか

(保護範囲)

2 今回の法令は、その自由を制約しているか

  (制約)

3 その制約は憲法上許されるか

  (正当化)

という3つの段階で審査するので三段階審査といいます。

それぞれ説明します。

1-1 保護範囲

まず、問題になりそうな自由が憲法上保障されているか(保護範囲)を検討します。

例えば、「この地域ではビラ配りをしてはいけない」という条例があった場合、問題となるのは「ビラ配りをする自由」です。

そこで、

ビラ配りをする自由

ビラを使って思想や情報を伝える

表現の自由(憲法21条1項)

というように、問題となっている自由が憲法では何の権利として保障されているのかを明確に特定しましょう。

1-2 制約

次に、今回の法令はその自由を制約しているか(制約)を検討します。

代表的な例としては、ある行為が禁止され、違反したら刑罰が科される場合、制約が認められます。

逆に、禁止規定や罰則はないけれど何らかの不利益があるというような場合、それが制約といえるのかを丁寧に検討する必要があります。

1-3 正当化

憲法上の権利に対する制約が認められた場合、その制約が許されるのか(正当化)を検討します。

正当化には、2つの手順があります。

■ 形式的正当化

1つ目は、法令の形式そのものに問題がないかを検討するという「形式正当化」です。

例えば、「危険な行為をしてはいけない」という法令がある場合、内容があまりにも不明確であり、何を禁止されているのかがわかりません。

このように、漠然不明確な法令は、「形式的正当化」をクリアできないため違憲となります。

ただし、法令は多かれ少なかれ抽象的な書き方をせざるを得ないので、ちょっとでもわかりにくい表現がある場合はなんでもかんでも違憲になるわけではありません。

現に、最高裁は、漠然不明確を理由に法令を違憲としたことは一度もありません。

そのため、形式正当化は必ず検討しなければいけないわけではなく、問題になりそうなときだけ検討すればよいのです。

■ 実質的正当化

2つ目は、法令の内容が合理的なものであるかを検討するという「実質的正当化」です。

これは、

法令をどれくらい厳しく審査するか決める

決めた基準に沿って、法令の目的と手段を審査する

という手順で審査していきます。

ここがとても重要なので、次章以降で詳しく解説します。

以上のとおり、三段階審査は3つのステップで検討するという点を押さえておいてください。

■三段階審査

1 問題になりそうな自由が、憲法上保障されているか

(保護範囲)

2 今回の法令は、その自由を制約しているか

  (制約)

3 その制約は憲法上許されるか

  (正当化)

第2章 違憲審査基準の定め方

この章では、違憲審査基準について解説します。

違憲審査基準とは、簡単に言えば「法令をどれくらい厳しく審査するかの基準」です。

例えば、「内閣の政策に反対する活動を禁止する」というような法律が簡単なチェックだけで合憲になってしまったら、国民の権利が大きく侵害されてしまいます。

他方で、例えば弁護士や医師などの仕事について資格制を設けることは「職業選択の自由」の制約ではありますが、このような資格制を常に厳しく審査して違憲にしてしまうと、かえって国民の安全が脅かされたり、柔軟な法律の制定が妨げられたりしてしまうおそれもあります。

ということで、法令が違憲かどうかは一律に決まるわけではなく、事案に応じてどの程度厳しく審査するかを検討する必要があるということです。

具体的には、

・権利の重要性

・制約の態様

・立法裁量

を総合的に考慮する必要があります。

それぞれ説明します。

2-1 権利の重要性

第一に、権利の重要性について解説します。

ここでは、制約される権利がどのようなものであるかを具体的に検討する必要があります。

制約される権利が重要であるほど、厳格な審査が必要になるとイメージしてください。

なお、伝統的な学説としては、「二重の基準論」という考え方があります。

これは、表現の自由のような精神的自由は厳格に審査し、職業選択の自由のような経済的自由は緩やかに審査するという考え方です。

確かに一般論としては、精神的自由はひとたび侵害されると回復が容易でないため、経済的自由と比べて厳格に審査すべきことが多いといえます。

しかし、精神的自由なら必ず厳格になるわけでも、経済的自由なら必ず緩やかになるわけでもなく、最終的には事案に応じたケースバイケースの判断になることはご注意ください。

2-2 制約の態様

第二に、制約の態様について解説します。

ここでは、権利を制約する手段がどのようなものであるかを具体的に検討する必要があります。

制約の態様が強力であるほど、厳格な審査が必要になるとイメージしてください。

例えば、ある行為を禁止する場合に、「いかなる場合であっても禁止する」のと「特定の時・場所・方法のみ禁止する」のとでは、前者の方が強力な規制といえます。

ただし、表現活動などは「特定の時・場所・方法で行うからこそ意味がある」ということもあり得ます。

全部を禁止していなければ必ず緩やかになるわけではなく、禁止されている部分がどれだけ不利益になるのかを検討することも大事です。

2-3 立法裁量

第三に、立法裁量について解説します。

ここでは、問題となっている法令について、どの程度立法府の裁量に委ねるべきであるかを検討する必要があります。

裁量が狭いほど、厳格な審査が必要になるとイメージしてください。

権利の性質で紹介した二重の基準論に照らすと、一般的には精神的自由の制約は立法府の裁量が狭く、経済的自由の制約は立法府の裁量が広いと考えられます。

ただし、やはりこれも一律ではなく、ケースバイケースの判断が必要です。

以上が違憲審査基準を定める際の考慮要素です。

この中でも特に重要なのは権利の重要性と制約の態様であり、立法裁量は必ずしも論じなければならないわけではありません。

■審査基準の定め方

高い ◀ 権利の重要性 ▶ 低い

強い ◀ 制約の態様 ▶ 弱い

狭い ◀ 立法裁量 ▶ 広い

厳格 ◀ 違憲審査基準 ▶ 緩やか

第3章 違憲審査基準の種類

この章では、違憲審査基準にはどのような種類があるのかを解説します。

結論として、代表的な違憲審査基準は以下の3つです。

  • 厳格な審査基準
  • 厳格な合理性の基準(中間的な審査基準)
  • 合理的関連性の基準(緩やかな審査基準)

それぞれ厳しさが異なる基準ですが、共通点としては、どれも目的と手段を検討します。

そのため、違憲審査は「目的手段審査」ともいわれるのです。

それぞれ解説します。

3-1 厳格な審査基準

一番厳しい基準が、厳格な審査基準です。

具体的には、

  • 目的がやむにやまれぬものであること
  • 手段が必要最小限度にとどまること

をクリアできないと違憲です。

「やむにやまれぬ」とは、憲法上必要不可欠とされるほど重要ということなので、個人の生命や身体といった極めて重要な法益を守る場合に限られます。

次に、「必要最小限度」とは、過大でも過少でもない、すなわち必要十分条件を満たしていることをいいます。

必要以上の制約があればもちろん違憲ですし、目的を達成するのに必要なレベルよりも過少であれば、目的達成に役立たないので違憲となります。

このように、厳格な審査基準は極めて厳しいものであり、この基準で合憲になる可能性はとても低いです。

3-2 厳格な合理性の基準

次に厳しい基準が、厳格な合理性の基準(中間的な審査基準)です。

変わったネーミングですが、「厳格な審査基準」と「合理的関連性の基準」の間をとって「厳格な合理性の基準」と覚えましょう。

具体的には、

  • 目的が重要であること
  • 目的と手段との間に実質的関連性が認められること

をクリアすれば合憲となります。

「目的が重要である」とは、憲法上保護に値するほどの重要性があるということなので、簡単には認められませんが、いわゆる「公益」といわれるような利益であっても認められる可能性があります。

例えば、「美観風致」のような目的の場合、それがなぜ重要であるかは丁寧に論じる必要があります。

次に、「実質的関連性」とは、手段が目的達成に役立つことが客観的な根拠に基づき認められるということです。

例えば、手段が目的達成に役立つ可能性はあるものの、データによる裏付けなどはなく、あくまで想像の域を出ない場合(観念上の想定といいます)、実質的関連性は認められません。

3-3 合理的関連性の基準

最も緩やかな基準が、合理的関連性の基準(緩やかな審査基準)です。

具体的には、

  • 目的が正当であること
  • 目的との間に合理的関連性が認められること

をクリアすれば合憲となります。

「目的が正当である」とは、憲法の趣旨に合致しているということなので、特に重要な利益でなくても、憲法に反しているような不当なものでなければ正当となります。

次に、「合理的関連性」とは、手段が目的達成に役立つことが想定できるということです。

客観的な裏付けのない観念上の想定であったとしても、一定の根拠があれば認められます。

ただし、

  • どう考えても目的と無関係
  • どう考えても逆効果

といった場合には合理的関連性すら認められません。

■違憲審査基準の種類

審査基準

目的

手段

厳格な審査基準

やむにやまれぬ

必要最小限度

厳格な合理性の基準

重要

実質的関連性

合理的関連性の基準

正当

合理的関連性

第4章 まとめ

以上のとおり、憲法の事例問題はある法令が合憲か違憲かを問われることが多く、その際には三段階審査という考え方が役に立ちます。

■三段階審査

1 問題になりそうな自由が、憲法上保障されているか

(保護範囲)

2 今回の法令は、その自由を制約しているか

  (制約)

3 その制約は憲法上許されるか

  (正当化)

正当化の審査では、権利の重要性制約の態様立法裁量から違憲審査基準を定めます。

■審査基準の定め方

高い ◀ 権利の重要性 ▶ 低い

強い ◀ 制約の態様 ▶ 弱い

狭い ◀ 立法裁量 ▶ 広い

厳格 ◀ 違憲審査基準 ▶ 緩やか

具体的な違憲審査基準は、以下の3種類があります。

■違憲審査基準の種類

審査基準

目的

手段

厳格な審査基準

やむにやまれぬ

必要最小限度

厳格な合理性の基準

重要

実質的関連性

合理的関連性の基準

正当

合理的関連性

まずはこの記事で基本の型を押さえてから、応用的な問題にもチャレンジしてみましょう。

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