【憲法入門3】平等権とは? 基礎から違憲審査の重要ポイントまで解説!

目次

この記事を読んで理解できること
- 平等権とは何か
- 平等権と二段階審査
- 違憲審査のポイント
▼前回の記事▼
【憲法入門2】プライバシー権とは? 憲法13条の定義から具体的判例まで完全解説
あなたは、
- 平等権がどのようなものか知りたい
- 平等権はどうやって違憲審査をするのか知りたい
- 平等権の違憲審査で重要なポイントを知りたい
などとお考えではありませんか?
平等権は非常に重要な権利ですが、内容が抽象的なので、初学者の方にはとっつきにくいところがあります。
基本書を読んで「わかったような、わからないような…」と思った方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、初学者の方にもわかりやすいように、
第1章では平等権とは何かについて、
第2章では平等権と二段階審査について、
第3章では違憲審査基準の定め方について、
それぞれ具体的に解説します。
この記事を読めば、平等権についての基礎はもちろん、応用問題にも対応できる思考力が身に着くでしょう。
第1章 平等権とは何か
この章では、そもそも平等権とは何かを解説します。
まずは条文を読んでみましょう。
第14条
1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
このように、憲法は法の下の平等を定めていますが、これだけではよくわからないですね。
結論として、憲法が保障する平等とは、
- 法内容の平等
- 相対的平等
を意味します。
それぞれ見ていきましょう。
1-1 法内容の平等
憲法14条は、国民は「法の下に」平等であると規定されています。
これを文字どおりに読むと、「法を適用する際に差別してはいけない」という法適用の平等を意味することになります。
例えば、政治家がある法律を男性には適用するけど女性には適用しないのは許されないということです。
ただ、法適用の平等だけだと、法律の内容自体が不平等であることは禁止されないことになってしまいます。
そこで、法の下の平等とは、法適用の平等はもちろんのこと、法内容の平等も保障していると解釈されています。
例えば、国会議員が女性を差別するために男性を優遇するような法律を作ることもは許されないということです。
1-2 相対的平等
誰もが平等であることは大事ですが、他方で人間は一人ひとり違う個性を持っています。
にもかかわらず、無理やり全員を均等に扱おうとすると、個人の自由が制限されたり、かえって不平等になってしまったりすることになりかねません。
そこで、憲法が保障する平等とは、「等しいものは等しく、等しくないものは等しくなく扱う」という相対的平等を意味すると解釈されています。
例えば、女性には産前産後休暇が認められていますが、妊娠・出産は女性にしかできないので当然ですよね。
むしろ、出産の直前や直後にまで会社に出勤しろと言う方が女性に対する差別といえます。
このように、平等とは全ての人間を均等に扱うということではなく、不合理な差別を禁止するということです。
第2章 平等権と二段階審査
第1回の記事では、法令が合憲が違憲かを問われたときには「三段階審査」を使うと説明しました。
三段階審査とは、
1 問題になりそうな自由が、憲法上保障されているか(保護範囲) 2 今回の法令は、その自由を制約しているか(制約) 3 その制約は憲法上許されるか(正当化) |
という3つのステップで合憲か違憲かを審査する考え方です。
とても便利な考え方ですが、実は平等権の審査では三段階審査は使えません。
以下の二段階審査となります。
1 ある人達と別の人達が区別されているか(区別の存在) 2 その区別は憲法上許されるか(区別の正当化) |
平等権の場合、「権利」と「制約」を明確に切り分けることが難しいので、「区別の存在」にまとめることで二段階となっています。
第3章 違憲審査のポイント
この章では、平等権の違憲審査をする際に重要なポイントを解説します。
結論として、平等権の違憲審査においては、
- 14条1項後段列挙事由か
- 自己の意思や努力でどうにもならないか
- 重要な法的地位に関わる区別か
という3つの観点が重要です。
それぞれ説明します。
3-1 14条1項後段列挙事由
もう一度、憲法の条文を読んでみましょう。
第14条
1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
ここに規定されている「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」が14条後段列挙事由です。
まず前提として、憲法はすべての不合理な差別を禁止しているので、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」以外の理由による差別も禁止されます。
つまり、14条後段に書かれているのはあくまで例示ということです。
もっとも、わざわざこれらを例示したということは、差別してはいけない典型例として想定されているといえます。
実際に、人種差別や性差別などは歴史上も繰り返し行われてきました。
そのため、区別の理由が14条後段列挙事由に該当する場合、「本当に合理的なのか疑わしい」ということになるので、審査基準は上がる傾向があります。
3-2 自己の意思や努力でどうにもならない
次に、自己の意思や努力でどうにもならないかという観点があります。
例えば、暴力団やその団員に対して、厳しい規制を講じる法律や条例はよくあります。
暴力団の構成員としては「差別だ!」と思うかもしれません。
しかし、暴力団に所属するかどうかは本人の意思決定によるものなので、不利益を被ることは仕方ないという側面があります。
このように、自分が選んだ結果として不利益を被った場合、審査基準は下がる傾向があります。
他方、生まれつきの身分などは、自分では選びようがありません。
例えば、法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子供を嫡出子、そうでない子供を非嫡出子といいます。
嫡出子であるか非嫡出子であるかは、意思や努力でどうにもならないものです。
このような違いを理由に区別をする場合、審査基準は上がる傾向があります。
最高裁判例では、最決平成25年9月4日が、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を違憲としました。
3-3 重要な法的地位に関わる区別
区別された結果、どのような不利益を被るのかも審査基準に影響します。
例えば「男性には青いリボンを、女性には赤いリボンをあげます」という条例があったとしても、別に男性や女性が具体的な不利益を被ることはないはずです(LGBTの人はどうするのかなどの問題は出てきますが)。
このように、そもそも区別されることで何が困るのかも考える必要があるのです。
有名な最高裁判例として、国籍法判決(最判平成20年6月4日)があります。
父だけが日本国民で、母が外国人の非嫡出子が生まれた場合、出生後に父母が婚姻して父が認知した場合に限って非嫡出子の国籍取得が認められていました。
結婚していない日本人の父と外国人の母との間に子が生まれる ↓ 父母の婚姻&父の認知 ↓ 日本国籍取得 |
このように、
「父母の婚姻&認知により嫡出子となった子供」 と 「認知されたが父母が婚姻していない非嫡出子」 |
が区別され、後者には国籍取得が認められていなかったのです。
最高裁は、日本国籍が「基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等を受ける上で意味を持つ重要な法的地位」であるとして、このような区別を違憲としました。
また、最高裁は、父母が結婚するかどうかは「自らの意思や努力によっては変えることのできない父母の身分行為に係る事柄」であるとも指摘しています。
このように、国籍法は、
- 自己の意思や努力でどうにもならない理由で
- 重要な法的地位を与えない区別をした
という理由から厳しく審査されたのです。
第4章 まとめ
以上のとおり、法の下の平等とは、
- 法内容の平等
- 相対的平等
を意味しています。
また、平等権の違憲審査は
1 ある人達と別の人達が区別されているか(区別の存在) 2 その区別は憲法上許されるか(区別の正当化) |
という二段階審査です。
平等権の違憲審査は、
- 14条1項後段列挙事由か
- 自己の意思や努力でどうにもならないか
- 重要な法的地位に関わる区別か
という観点が重要なポイントです。
この記事では、初学者の方にもわかりやすいように、一般的な考え方をざっくりと解説しています。
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