東京大学法科大学院は目指すべき?司法試験合格の実態と入試の難易度
目次
この記事を読んで理解できること
- 東京大学法科大学院(東大ロー)の概要
- 東京大学法科大学院の司法試験の合格率
- 東京大学法科大学院の入試情報
- 東京大学法科大学院の教育の特色
- 法科大学院ルートの場合も予備試験を受験するのがおすすめ
あなたは、
- 東京大学法科大学院のことが詳しく知りたい
- 東京大学法科大学院に進学すれば司法試験に合格できるのか知りたい
- 入試の内容や難易度を知りたい
とお考えではありませんか?
法曹を目指すなら、東京大学法科大学院への進学を検討する方は多いのではないでしょうか。
そのとき、入学の難しさや、司法試験の合格のしやすさについては特に気になりますよね。
結論から言うと、東京大学法科大学院の入試倍率は約3倍であり、司法試験合格率は50~60%程度となっています。
進学すれば必ず司法試験に合格できるわけではなく、他の法科大学院と同様、独自の試験対策が必須になります。
しかし、最高峰の教授陣から直接指導が受けられるなど、東京大学法科大学院ならではの魅力もあります。
この記事を読めば、東京大学法科大学院の入試の内容から進学後の実情まで知ることができ、進学を目指すかどうかの判断材料となるでしょう。
具体的には、
1章で東京大学法科大学院の基本情報
2章で東京大学法科大学院の司法試験での結果
3章で入試の内容や難易度
4章で教育の特色
5章でまずは予備試験に挑戦することをおすすめする理由
について、詳しく解説します。
東京大学法科大学院の特徴を確認し、司法試験合格に向けて自分が目指すべき方向性を考えていきましょう。
1章:東京大学法科大学院(東大ロー)の概要
まずは、東京大学法科大学院の基本的な情報について紹介します。
そもそも法科大学院とは何かについて確認されたい方は、以下の記事をご覧ください。
法科大学院(ロースクール)とは?進学するメリット・デメリットを徹底解説
1-1:基本情報
東京大学法科大学院の基本情報は以下のとおりです。
すべての法科大学院と同様、法学既修者コース(2年制)と法学未修者コース(3年制)の2つのコースを設けています。
国立の法科大学院の授業料は一律に定められており、年間の授業料が100万円を超える場合も多い私立の法科大学院に比べると、費用は抑えられます。
1-2:奨学金や授業料免除の制度
東京大学法科大学院独自の取組みとして、以下のような経済的支援の制度が用意されています。
参照:東京大学大学院法学政治学研究科法曹養成専攻「各種奨学金・助成に関する情報」
上記の他、法科大学院の学生であれば利用できる、日本学生支援機構や民間団体の奨学金制度などもあります。
これらの支援制度は競争率が高く、学業成績や家計状況などの条件を満たす必要があるため、早めに情報収集と準備をおこなうことが重要です。
2章:東京大学法科大学院の司法試験の合格率
東京大学法科大学院の修了生や在学生による司法試験結果について、詳しく解説します。
2-1:令和5年司法試験の合格率は59%
まずは、東京大学法科大学院のこれまでの司法試験の結果について見ていきましょう。
以下は、令和元年~令和5年の司法試験における東京大学法科大学院からの受験者数、合格者数、合格率を表しています。
令和5年の司法試験では、受験者数315人、合格者数186人、合格率は59%という結果でした。
令和5年の試験から在学中受験が可能になったため、受験者数が大幅に増加しましたが、合格率は直近の5年間において50~60%を維持しています。
在学中受験とは、法科大学院の在学生が所定の要件を満たすことで、修了を待たずに司法試験を受験できる制度です。
東京大学法科大学院に進学しても、約4割の受験者が不合格になっているのが現状であり、司法試験合格までの道のりは決して平坦ではないといえるでしょう。
2-2:令和5年の法科大学院別合格率は第4位
他の法科大学院の司法試験合格率と比較してみましょう。
以下は、過去5年分の司法試験合格率トップ5の法科大学院です。ただし、安定して高い実績を持つ法科大学院を選定するため、合格者数が50人以上の学校に限定しています。
東京大学法科大学院は安定して上位層にいますが、京都大学や一橋大学の方が司法試験合格率は上回っています。
大学の偏差値が高い方が司法試験に合格しやすいとは限らないため、それぞれの法科大学院の特徴をよく調べることが重要です。
また、ここで注目したいのは、合格率トップの法科大学院であっても70%前後にとどまるということです。
司法試験合格のためには、法科大学院のカリキュラムをこなすだけでは十分とはいえず、独自の試験対策が必要になってきます。
2-3:予備試験ルートでの合格者も多い
司法試験の受験資格には、法科大学院に進学する「法科大学院ルート」のほか、予備試験に合格する「予備試験ルート」があります。
東京大学法科大学院では、在学中に予備試験に合格し、より早い段階で司法試験に合格する例が比較的多いのです。
以下は、司法試験合格率上位5校における、令和4年度に予備試験合格または予備試験ルートによる司法試験合格を理由に退学した学生の人数です。
参照:文部科学省 令和5年度法科大学院関係状況調査 「退学率および状況」
このように、東京大学が他の法科大学院と比較して、予備試験ルートでの司法試験合格を理由とする退学者数が突出して多くなっています。
そのため、法科大学院ルートでの合格率以上に、東京大学法科大学院からの司法試験合格者は多くなります。
予備試験ルートは、法科大学院ルートよりも早期に法曹になれるだけでなく、さまざまなメリットがあるため、法科大学院進学後も挑戦する人は少なくありません。
2つのルートの違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
法科大学院と予備試験を徹底比較!司法試験合格におすすめのルートは?
3章:東京大学法科大学院の入試情報
東京大学法科大学院の進学を考えるのであれば、入試に関する情報として、以下の8つを押さえておきましょう。
- 入試倍率は約3倍
- 入学者の約6割が他大学出身者
- 入試スケジュール
- 募集人数
- 出願書類
- 選抜方法
- 筆記試験の出題傾向
- おすすめの入試対策
ここでは令和7年度の学生募集要項に基づき、それぞれ説明します。
3-1:入試倍率は約3倍
東京大学法科大学院の入試の倍率は、例年約3倍です。
以下は、過去5年分の入試における法学既修者コースと法学未修者コース別の倍率(受験者数÷合格者数)を表しています。
全体の法科大学院の入試倍率は2~8倍であるため、他の法科大学院と比べて必ずしも高いわけではありません。
しかし、受験者の多くは東京大学卒業生や他の上位校出身者など、優秀な人材が集まる傾向にあるため、実質上の難易度は見かけの倍率以上に高くなる可能性があります。
3-2:入学者の半数以上が他大学出身者
東京大学法科大学院では、入学者の半数以上が他大学出身者です。
令和6年度の入学者データでは、入学者の総数244人のうち東京大学出身者が114名(46.7%)、他大学出身者が130名(53.3%)となっています。
法学既修者コースに限ったとしても46.4%であり、法学未修者コースであれば73.8%にも上ります。
参照:東京大学法科大学院「入試合格者数・入学者数(2024年度)」
法科大学院は多様なバックグラウンドを持つ法曹を輩出することを重視しており、社会人や他学部の受験者なども幅広く受け入れている結果でしょう。
他大学の学生であっても、しっかりとした受験対策をおこなえば、十分に合格を狙うことができるということです。
3-3:入試スケジュール
令和7年度入学の東京大学法科大学院入試スケジュールは、以下のとおりです。
一般的に、私立大学の法科大学院は6月頃から出願が始まり、7~9月頃に試験が実施されるため、多くの受験者が私立大学と併願します。
また、予備試験は例年7月に短答式試験、9月に論文式試験、1月に口述試験が実施されるため、東京大学法科大学院の入試前に予備試験の挑戦が可能です。
予備試験の経験は、法科大学院入試の論述試験対策としても非常に効果的です。
両方の試験を視野に入れて、スケジュールをたてることをおすすめします。
3-4:募集人数
東京大学法科大学院の令和7年度入学における募集人数は、以下のとおりです。
法曹コースとは、令和2年から開始された、法学部3年間と法科大学院2年間の5年一貫教育により、効率的に法曹養成を目指す制度です。
社会人特別選抜枠は社会人経験3年以上の者、理系特別選抜枠は理系学部または大学院の出身者が対象になります。
なお、いずれの特別選抜枠も、その枠での出願者は一般選抜としても合否判定を受けられるため、特別選抜枠に挑戦することで不利になることはありません。
3-5:出願書類
東京大学法科大学院への出願には、以下の書類が必要です。
- 入学願書
- 成績証明書
- 卒業(見込)証明書
- 外国語能力証明書(英語はTOEFLかTOEICのみであり、2年以内に受験したものが対象)
- 志望理由書(所定の様式で作成)
- 写真(3か月以内撮影の上半身写真)
- 検定料30,000円の支払証明
- 法曹コースの成績証明書類と修了見込証明書(対象者のみ)
志望理由書はコースによって様式が異なり、これまでの学びや経験、志望理由、目指す法曹像などの記述が求められます。重要な評価対象の1つとなるので、丁寧に作成しましょう。
※参照:志願理由書(法学未修者)
また、自分が入学するのにふさわしいと考える特記事項を記載し、それに関係する推薦状や資格証明書などの書類を添付することもできます。
外国語の能力を証明するTOEFLなどは、受験から証明書の発行までに時間がかかるため、出願の半年前までには受験することをおすすめします。
3-6:選抜方法
東京大学法科大学院の入試は、第1段階選抜と第2段階選抜の2段階で実施されます。
第1段階は、書類審査です。
ここでは、学業成績、外国語の能力などが評価され、合格通知がくれば第2段階に進めます。
第2段階では筆記試験が実施され、その成績と志望理由書、外国語能力、学業成績を総合的に審査するのです。
法学既修者の筆記試験では、公法系・民事系・刑事系の3科目から各1題の計3題が出題されます。
法学未修者の場合は、法律の知識を問わない総合問題が2題(小論文)出題される形式です。
なお、法曹コースの特別選抜枠では学業成績が特に重視され、東京大学法学部の法科大学院進学プログラムの成績優秀者は、筆記試験が免除されます。
3-7:筆記試験の出題傾向
法学既修者コースにおける筆記試験では、予備試験でも試験範囲となる法律基本科目(憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法)について出題されます。
公法系(憲法・行政法)では、表現の自由や集会の自由、人権の手続的保障に関する出題がされています。また、裁量権の逸脱濫用や、訴訟選択を検討させる問題が頻出です。
民事系の民法と民事訴訟法は、出題分野にあまり偏りがなく傾向がつかみにくいですが、商法では利益相反取引や株主代表訴訟が頻出論点です。
刑事系(刑法・刑事訴訟法)も、重要な論点が全体的に問われる傾向にあります。
法学未修者の筆記試験では、法的な問題に関する課題文を要約し、自分の意見を論述させるものなどが出題され、論理的思考力や問題解決能力が評価されます。
3-8:おすすめの入試対策
東京大学法科大学院の進学を目指す場合、予備試験の合格も目指して学習をすることをおすすめします。
特に東京大学法科大学院などの上位の法科大学院の入試では、予備試験の受験経験がある受験者が少なくないため、学習レベルで不利になる可能性があるからです。
予備試験の論文式試験の出題範囲は、東京大学法科大学院入試で問われる法律基本科目をすべてカバーしています。
予備試験に向けた対策をすれば、基本的な法律知識はもちろん、論理的な文章構成力や制限時間内に答案を作成する能力も身につくため、法科大学院入試にも対応できます。
また、予備試験に合格できれば法科大学院に通わずに司法試験を受験でき、90%以上の合格者が司法試験にも合格しているため、受けるメリットが大きいのです。
当然ながら、東京大学法科大学院の過去問演習にも取り組みましょう。
過去問は、東京大学文学部複写センターで購入でき、店頭・FAX・ネットでの注文が可能です。
※参照:東京大学文学部複写センター
4章:東京大学法科大学院の教育の特色
東京大学法科大学院の教育の特色としては、以下の4つが挙げられます。
- 最高峰の教授陣からの直接指導
- 企業法務や国際的な視点のプログラムの充実
- 法律事務所との連携による実践的な教育
- 司法試験対策のサポートはあまりない
それぞれ説明します。
4-1:最高峰の教授陣からの直接指導
東京大学法科大学院の魅力の1つは、国内外で高く評価されている教授陣から直接指導を受けられる点です。
憲法、民法、刑法などの基本科目はもちろん、労働法、知的財産法など、さまざまな法分野の第一線で活躍する著名な法学者が多数在籍しているのです。
このような環境は、法曹を目指す学生にとって非常に大きな価値があります。
基本書などの執筆者から、その背景にある考え方を直接学べるだけでなく、最新の法改正や判例について、第一人者の分析をすぐに知ることができるのです。
また、実務に精通した教授から実践的な指導も日常的に受けられるため、将来法曹として活躍するための本質的な理解力と応用力を養うことができます。
4-2:企業法務や国際的な視点のプログラムの充実
東京大学法科大学院では、企業法務や国際的な視点のプログラムが充実しています。
実務の最前線で活躍し、国際的な法分野にも対応できる法曹の育成に力を入れているからです。
具体的には、倒産法・知的財産法・国際私法・労働法・租税法・経済法などのビジネス・ロー科目を選択必修科目としています。
また、以下のような国際的な教育プログラムが実施されています。
- 英語による法律授業
- 外国人専任教員による英米法やアジア・ビジネス法などの専門教育
- グローバル・ビジネスロー・サマープログラム(海外の研究者・実務家による英語でおこなう集中講義)
- 海外派遣プログラム(海外の法律事務所での1ヶ月間の研修)
グローバルに活躍する法曹を目指す学生にとって、貴重な学習機会となるでしょう。
4-3:法律事務所との連携による実践的な教育
東京大学法科大学院では、東大法曹会との強力な連携により、充実した実務教育プログラムを実施しています。
東大法曹会とは、東大出身の法曹が所属する法律事務所などを含むネットワークであり、東京大学法科大学院生の実務教育を全面的にサポートしています。
その代表的な活動が「短期トレイニー」制度です。この制度は、休業期間中に、東大法曹会会員の法律事務所で約1週間の研修をおこなうものです。
研修では、法律相談への同席や法的調査の補助などを通じて、実践的な経験を積むことができます。
また、定期的に「進路選択セミナー」や「座談会」を開催し、第一線で活躍する若手法曹から経験談を直接聞く機会も提供しています。
現役の法曹実務家との直接的な交流により、将来のキャリアプランを具体的にイメージすることができるでしょう。
4-4:司法試験対策のサポートはあまりない
東京大学法科大学院では、直接的な司法試験対策はおこなわれていません。
法科大学院は司法試験予備校ではなく、法曹としての本質的な能力を養成する場であるという基本理念があるからです。
授業では基礎理論の徹底的な理解と実務的な応用力の養成に重点が置かれ、司法試験の答案練習などは基本的に実施されません。
そのため、司法試験の過去問演習や答案作成トレーニングなどは、学生の自主的な学習に委ねられています。
司法試験に合格するためには、法科大学院の授業をこなすだけでなく、体系的な試験対策が必要です。
5章:法科大学院ルートの場合も予備試験を受験するのがおすすめ
東京大学法科大学院への進学を目指す場合でも、予備試験を受験することをおすすめします。
なぜなら東京大学法科大学院の入試では、予備試験の受験経験があり、すでに高い知識と法的思考力を身につけているライバルが数多くいるからです。
予備試験レベルの学習なしでは、上位の法科大学院の入試を突破することも難しいでしょう。
予備試験の出題範囲は、既修者コースの入試科目と重なり、予備試験対策で培われた法的思考力も入試で強みとなります。
そもそも、予備試験合格は法科大学院の学費や通学時間の節約になるとともに、その後の司法試験合格率が極めて高いため、挑戦して損はありません。
しかも、予備試験1桁合格者が作成する教材「ヨビロン」で学べば、予備試験特有の対策法が身に付けられ、難関の予備試験であっても十分に合格が目指せます。
もし、法科大学院ルートと予備試験ルートで迷っている方がいれば、以下の記事で2つのルートを徹底比較しているので、ぜひ参考にしてみてください。
法科大学院と予備試験を徹底比較!司法試験合格におすすめのルートは?
まとめ|東京大学法科大学院は最高峰の教育を受けたい人におすすめ
東京大学法科大学院は、最高峰の教育環境と安定した司法試験合格実績を備えた法科大学院です。
東京大学法科大学院の主な特徴としては、以下の点が挙げられます。
- 司法試験合格率は50~60%
- 入試倍率は約3倍
- 入学者の半数以上が他大学出身者
- 最高峰の教授陣による質の高い教育
- 国際的なプログラムや実践的な教育が充実
これらを踏まえ、東京大学法科大学院を目指す方には、まず予備試験の受験をおすすめします。
その理由は、以下の3つです。
- 東京大学法科大学院の受験者には予備試験経験者が多く、予備試験レベルの学習が必須
- 予備試験の学習は法科大学院入試対策にも効果的
- 予備試験に合格できれば、より早期に、より高い確率で司法試験合格を目指せる
ただし、最難関といわれる予備試験の合格を目指すなら、試験に特化した効果的な対策が不可欠です。
「ヨビロン」では、予備試験特有の出題傾向と対策法を熟知した、予備試験1桁合格者が提唱する「客観的読解法」や「解法パターン」を学べます。
試験本番で初見の問題が出ても、確実に点がとれるこれらの方法は、他では絶対に学べません。
今なら、以下のLINE登録により、「解法パターン」とその活用方法などを解説した動画が無料でご覧いただけます。
ぜひ、最難関試験合格への第一歩として、お役立てください。
LINE特典動画では、私が提唱する「解法パターン」とその活用方法の一端をお見せします。
動画①では、「判例の射程とは何か」を予備試験の過去問を題材にしながら分かりやすく解説します。この解説を聞いた受講生からは「判例の射程の考え方・書き方がようやくわかった!」との言葉をいただいております。
動画②では、試験開始前に見ることで事案分析の精度が格段にあがるルーズリーフ一枚に収まる目的手段審査パターンまとめです。
動画③では、どの予備校講師も解説をぼやかしている生存権の解法を明確にお渡しします。
そして、動画④では③の生存権の解法パターンを使って、難問と言われた司法試験の憲法の過去問の解説をします。
是非、解説動画を受け取って、世界を変えてください。