主張反論パターン
(主張反論パターン)段階理論
(反論)
当該許可の要件は「~~~」であるところ、薬事法判決の距離制限とは異なり、自己の意思や努力で充足可能であるため強力な制限とは言えない。
(私見)
確かに、距離制限とは異なり理論上は自己の意思や努力で許可要件を充足することは可能である。しかし、………という事情を考えると、当該要件を充足することは現実的に不可能である。したがって、形式的には自己の意思や努力で達成できることをもって強力な制限ではないとする被告の反論は失当である。
目的二分論(立法裁量論)
(1)総論
(論証)薬事法判決
本件では、職業選択の自由について許可制に匹敵する強力な制限が課せられており、法1条や立法過程から鑑みるに生命・健康を保護する消極目的規制であることに鑑みて、薬事法判決の射程が及び厳格な合理性の基準を採用すべきである。
積極・消極併存でもどちらかが主たる目的といえる場合は以下のように記述する。
(主張反論パターン)目的併存であるが、消極が主たる目的である場合
(反論)
積極目的もその規制の目的であるため、薬事法判決の射程が及ばず小売市場法判決の明白性の基準を用いるべきである。
(私見)
薬事法判決自体も、消極目的(施設の欠陥による不良薬品の供給の防止)と積極目的(無薬局地域への薬局開設の促進)が併存していた事例であったが、消極目的を主たる目的として判断した判決であったため、併存であることからただちに薬事法の射程外という主張は失当である。
そこで検討するに、併存する目的のうち主たる目的はBであり消極目的規制といえる。
したがって、薬事法判決の射程が及ぶと解する。
(コメント)
立法過程や個別法の構造を指摘して主たる目的を認定しよう(詳しくは過去問研究で)
※なお、問題文中の目的が個別法1条などから「租税の適正な賦課徴収」であれば反論として酒税法判決を指摘して裁量論を展開することになろう(少なくとも反論では指摘)。
ただ現場でどう考えても主たる目的が積極目的規制としか思えない場合は、目的二分論自体を放棄するという逃げ道を自分でストックしておくと便利なので、目的二分論が現在採用されていないのではないかという私見で主張することも可能。
※個人的には、目的二分論の趣旨から考えれば解答は導けるので、目的二分論自体を否定するのは思いつかない場合の最終手段と考えよう。
(2)小売市場判決の射程
(主張反論パターン)経済的弱者保護ではない
(反論)
当該規制目的は積極目的であり、小売市場判決の射程が及び明白性の基準を採用すべきである。
(私見)
積極目的規制は、薬事法判決によると国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等が含まれる。小売市場判決は経済的弱者の保護の問題である。
他方、本件は経済的弱者の保護ではなく、国民経済の円満な発展を目的とする積極目的規制である。
かかる目的は被告主張のとおり積極目的であるが、国民全体に広く利害関係を有する利益であり、それが立法目的と掲げられた場合に民主的政治過程において交渉と妥協が適切に行われない可能性があることは、同じく国民全体に広く利害関係を有する消極目的と同様である。
したがって、小売市場判決の射程は及ばず薬事法判決の趣旨が及ぶ。
(主張反論パターン)弱者を犠牲にする弱者保護(西陣ネクタイ事件)
(反論)
当該規制目的は積極目的であり、西陣ネクタイ事件・小売市場判決の射程が及び明白性の基準を採用すべきである。
(私見)
確かに、積極目的規制ではあるが、国会での利害調整の結果ある集団に極めて強い犠牲を課し、適切な手当てをしない今回のような事例の場合、国が自ら社会的経済的弱者を創出することにほかならず積極目的の枠を超える。
また、零細でありながらまっとうに経営努力をした罪のない事業主を廃業にまで追い込むような規制は権利制限が強力にすぎるため、制限の強力さに着目した薬事法判決の趣旨が及び厳格な合理性の基準を採用すべきと解する。
(コメント)
あまり判例を叩かないで論証する私であるが、唯一といっていいほど叩かなければならない判例だと思っている。というか叩かないと論証が作れない。