予備試験の口述試験の概要と合格率、3つの対策方法と2つのポイント
目次
この記事を読んで理解できること
- 予備試験の口述試験とは?
- 予備試験の口述試験の3つの対策
- 予備試験の口述試験の2つのポイント
- 口述試験の過去問題のテーマ
あなたは、
- 予備試験の口述試験について知りたい
- 予備試験の口述試験の合格率は?
- 予備試験の口述試験の対策が知りたい
などとお考えではありませんか?
予備試験の口述試験は、短答式試験と次の論文式試験に合格した受験生を対象とした、面接形式で行われる予備試験の最終試験です。
口述試験は、試験官から出題される問題に対して口頭で答える形式で行われ、合格率は毎年90%を超えています。
口述試験に合格できれば、最終的に予備試験合格となり、司法試験の受験資格が得られます。
司法試験予備試験の流れと合格率は、次のようになります。
口述試験の合格率は高めですが、面接形式の試験という緊張やプレッシャーから実力が発揮できない可能性や、論文式試験の合格者だけが受験するレベルの高さもあるため、事前の対策は十分に行う必要があります。
この記事では、
1章では、予備試験の口述試験とは?
2章では、予備試験の口述試験の3つの対策
3章では、予備試験の口述試験の2つのポイント
4章では、口述試験の過去問題のテーマ
について解説します。
この記事を読んで、予備試験口述試験の内容や傾向をしっかり把握し、予備試験合格に向けて役立ててください。
予備試験の概要については、こちらの記事で詳しく解説しています。
予備試験とは?その特徴や試験科目から合格率、対策の重要性を徹底解説
1章:予備試験の口述試験とは?
予備試験の口述試験は、受験者の法的な推論や分析、論理的思考力、そしてコミュニケーション能力を総合的に評価する重要な試験です。
この章では、口述試験の基本的な情報として、
- 試験日程と試験科目
- 試験結果と合格率
- 採点方法と合格ライン
について解説していきます。
1-1:試験日程と試験科目
口述試験は、論文式試験の合格発表後、1月中旬に2日間かけて実施されます。
試験科目は、法律実務基礎科目の民事及び刑事の2科目で、試験時間は1科目について約15分~30分程度です。
試験官は通常2名で、そのうち1名が主たる質問者となります。
試験の順番は、当日試験会場の受付で受け取る自分の番号札に、試験室番号と一緒に記載されています。
試験の順番が早ければ待ち時間もさほど問題ではありませんが、順番によっては数時間待たされる場合もあります。
1-2:試験結果と合格率
口述試験の試験結果は、2月に発表されます。
年度ごとの口述試験の受験者数と合格率、そして最終的な予備試験の合格率は次のようになります。
合格率は年度によって変動しますが、おおよそ90%台で推移しており、令和3~5年は98%を超えるほど合格率は高いです。
ただし、この合格率は口述試験のみの数字であり、予備試験全体の最終合格率は約3~4%とかなり低くなっています。
例えば、令和5年度の予備試験では、口述試験の受験者数は487名で、最終合格者数は479名、合格率は約98.4%でしたが、予備試験全体の最終合格率は約3.6%となっています。
1-3:採点方法と合格ライン
口述試験の採点では、試験官の主観的評価に基づいて、受験者の回答の正確さ、法的な推論や分析、そして表現力などが総合的に評価されます。
採点方法と合格ラインについては、次のようになります。
■採点基準
採点は各科目の成績に応じて行われ、以下の4段階で評価されます。
- 63点~61点:一応の水準を超えている成績
- 60点:一応の水準(基準点)
- 59点~57点:一応の水準に達していない成績
- 56点以下:特に不良な成績
■得点分布
目安としては、60点が半数程度を占め、上位25%が61点以上、下位25%が59点以下を取る形で点数が配分されるといわれています。
実際に63点満点や56点以下の得点がつくことは稀で、ほとんどの受験生は60点前後の評価に収まるとされています。
■合格ライン
過去10年以上にわたって、毎年合格点は119点となっています。
つまり、民事と刑事の両方で59点を取ると合計118点で不合格になりますが、片方で60点を取れば119点に達して合格となります。
2章:予備試験の口述試験の3つの対策
口述試験に合格するためには、計画的な準備が不可欠です。
効果的な対策として、次の3つがあげられます。
- 事前準備と分析
- ロールプレイング形式での練習
- 基礎的な知識を復習する
それぞれ解説します。
2-1:事前準備と分析
口述試験の対策としては、過去問を中心に復習することで、典型的な事例に対する対応力を強化することが重要です。
事前準備としては、年度ごとの過去問題のテーマを分析にしたり、市販の書籍や予備校などが提供する過去問の再現集を活用したりすることをおすすめします。
短答式試験や論文式試験とは異なり、口述試験の出題内容は公表されていませんので、実際に口述試験を受けた受験生のブログや予備校本などを参照する必要があります。
法務省のサイトでは予備試験の結果にあわせて、「口述試験における問題のテーマ」を掲載しています。
過去問題の年度ごとのテーマについては、4章で紹介します。
2-2:ロールプレイング形式での練習
過去問を分析してその傾向がわかったら、試験官役の相手を見つけてロールプレイング形式での練習がおすすめです。
ロールプレイング形式での練習のメリットとしては、実際の口述試験を想定しながら行うことで、効率的に知識やコミュニケーション能力を定着させ、学習効果が向上する点があげられます。
- 模擬試験の実施
友人や先輩、または予備校のサービスを利用して、実際の試験と同じ形式での模擬試験を行いましょう。
これにより、以下の点を改善できます。
- 時間管理能力
- 質問の理解力
- 回答の論理性
- 声の大きさやスピード
- フィードバックの活用
模擬試験を行った相手から具体的なフィードバックをもらいましょう。
特に以下の点について意見を求めることが有効です。
- 回答の内容の適切さ
- 説明のわかりやすさ
- 態度や印象
2-3:基礎的な知識を復習する
新しい教材を始めるのは控え、これまで学んできた基礎的な知識の復習に集中しましょう。
特に重要なのは以下の点です。
- 民事系:要件事実の復習、執行・保全手続、弁護士倫理
- 刑事系:刑法と刑事訴訟法の基本的な知識、弁護士倫理
複雑な論点や議論の多いテーマよりも、基礎的な論点に焦点を当てて復習を進めます。
試験では詳細な質問がされる可能性もありますが、基本的な知識をしっかりと押さえた上で回答し、試験官の誘導に適切に対応することが大切です。
時間が許せば細かい知識まで復習できれば理想的ですが、基礎的な部分をおろそかにしないよう注意しましょう。
基本をしっかりと固めることが、試験対策の鍵となります。
3章:予備試験の口述試験の2つのポイント
口述試験では、法律知識だけでなく、コミュニケーション能力も問われます。
この章では、試験官に好印象を与え、的確に回答するための2つの重要なポイントを解説します。
3-1:聞かれたことに答える姿勢に徹する
口述試験では、聞かれたことに答える姿勢に徹することが重要です。
- 質問の正確な理解
試験官の質問を注意深く聞き、その意図を正確に理解することが重要です。
- 的確な回答
質問に対して過不足なく回答することが求められます。
以下の点に気をつけましょう。
- 質問の範囲内で回答する
- 不必要な情報を省く
- 質問の意図を確認する勇気
質問の意味が不明確な場合は、恐れずに確認しましょう。
例えば:
「~についてお尋ねでしょうか?」
「一応確認ですが、・・・という理解でよろしいで
しょうか?」
- 知らないことは正直に認める
わからない点については、正直に認めることが重要です。
とっさに誤魔化そうとすると、試験官に悪印象を与えてしまいます。
また、わからない場合でも、とりあえず沈黙せずにわかる範囲で答えることも必要です。
試験官が正しい結論に向けて、質問を続ける形で誘導するケースもあります。
そもそも口述試験は合格率が非常に高い試験なので、試験官も基本的には受験生がきちんと答えられるように配慮してくれます。
そのため、見当違いの回答のまま押し通そうとしたり、わからないときに黙り込んでしまったりすると、せっかく試験官が誘導してくれるチャンスを失うことにもなりかねません。
- 論理的な構成での回答
回答は論理的に構成し、試験官が理解しやすいように心がけましょう。
結論を先に述べて、その後に理由や根拠を説明するようにすることがおすすめです。
3-2:面接という試験形式に慣れる
口述試験の対策でも説明したように、面接という試験形式に慣れておくことが重要です。
- 適切な態度と姿勢
口述試験は、法律知識だけでなく、将来の法曹としての適性も評価されます。
以下の点に注意しましょう。
- 姿勢を正し、真摯な態度で臨む
- 丁寧な言葉遣いを使用する
- 適度に頷きながら質問を聞く
- 緊張への対処
緊張するのは自然なことですが、それをコントロールする方法を身につけましょう。
- 深呼吸を行い、リラックスする
- 試験官を敵対者ではなく、対話の相手と捉える
- 事前の十分な準備で自信をつける
- 質問への即応力
予期せぬ質問にも冷静に対応できるよう、以下の点を意識しましょう。
- 質問を聞いた後、短い沈黙(1~2秒程度)を置いて考える時間を確保する
- 思考の過程を言語化する練習をする
- 様々な角度からの質問を想定して準備する
4章:口述試験の過去問題のテーマ
口述試験の準備において、過去の出題傾向を把握することは非常に重要です。
この章では、各年度の民事・刑事各科目の問題のテーマを紹介します。
民事・刑事共に、1日目・2日目に分けて2つのテーマがあります。
口述試験では、過去に出題された問題のテーマから再度出題されるケースもあるため、過去問の傾向を分析することは非常に重要です。
■令和5年 口述試験問題のテーマ
民事:
- 所有権に基づく建物退去土地明渡請求訴訟における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題、弁護士倫理上の諸問題
- 保証債務履行請求訴訟における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題、弁護士倫理上の諸問題
刑事:
- 特殊詐欺事案を踏まえた詐欺罪及び窃盗罪の諸問題(実行行為・共謀等)、逮捕・捜索差押えに関する諸問題
- 殺人罪、自殺幇助罪及び嘱託殺人罪の諸問題(実行行為・故意等)、逮捕・勾留、訴因変更に関する諸問題(公訴事実の同一性等)、弁護士倫理上の諸問題
■令和4年 口述試験問題のテーマ
民事:
- 所有権に基づく動産引渡請求訴訟における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題、証拠、弁護士倫理上の諸問題
- 所有権又は賃貸借契約の終了に基づく建物収去土地明渡請求事案における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題、弁護士倫理上の諸問題
刑事:
- 窃盗罪における不法領得の意思に関する諸問題、勾留延長に関する諸問題、証拠決定に関する諸問題、弁護士倫理上の諸問題
- 私文書偽造罪の諸問題、証拠調べに関する諸問題
※令和4年司法試験予備試験口述試験における問題のテーマについて
■令和3年 口述試験問題のテーマ
民事:
- 所有権に基づく動産引渡請求訴訟における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題,書証,弁護士倫理上の諸問題
- 譲受債権請求訴訟における実体法及び攻撃防御方法に関する諸問題,書証,弁護士倫理上の諸問題
刑事:
- 窃盗罪等における占有に関する諸問題,公訴提起から第一審冒頭手続までの手続に関する諸問題,弁護士倫理上の諸問題
- 犯人隠避罪及び証拠偽造罪の諸問題,実況見分調書の証拠能力に関する諸問題
※令和3年司法試験予備試験口述試験における問題のテーマについて
■令和2年 口述試験問題のテーマ
民事:
- 時効取得した不動産の所有権移転登記手続請求訴訟における攻撃防御方法に関する諸問題,証拠方法,弁護士倫理上の諸問題
- 賃貸借契約の終了に基づく不動産明渡請求訴訟における実体法ないし攻撃防御方法に関する諸問題,書証,弁護士倫理上の諸問題
刑事:
- 強盗罪,強盗致死及び強盗殺人罪の諸問題,共同審理に関する諸問題,弁護士倫理上の諸問題
- 公務執行妨害罪の諸問題,薬物事犯における被疑者の留め置きに関する諸問題,逮捕の手続に関する諸問題
※令和2年司法試験予備試験口述試験における問題のテーマについて
■令和元年 口述試験問題のテーマ
民事:
- 賃貸借契約の終了等に基づく不動産明渡請求事案における実体法ないし攻撃防御方法に関する諸問題,民事保全,弁護士倫理上の諸問題
- 所有権に基づく不動産明渡請求訴訟における攻撃防御方法に関する諸問題,民事保全,立証方法,訴訟手続,弁護士倫理上の諸問題
刑事:
- 遺棄罪,身分犯と共犯,不作為犯,公判前整理手続,証人尋問
- 同時傷害の特例に関する諸問題(要適用範囲等),承継的共同正犯,訴因変更
※令和元年司法試験予備試験口述試験における問題のテーマについて
まとめ:予備試験の口述試験の概要とポイント
予備試験の口述試験は、法科大学院を経ずに司法試験受験資格を得るための最終関門です。
この試験の特徴と重要なポイントを以下にまとめます。
- 試験の概要
- 試験日程:1月中旬に2日間かけて実施
- 試験科目:法律実務基礎科目の民事及び刑事の2科目
- 試験時間:1科目について約15分~30分程度
- 効果的な対策方法
- 過去問の徹底的な分析と研究
- ロールプレイング形式での模擬試験実施
- 基礎的な法律知識の再確認と深化
- 試験に臨む姿勢
- 質問を正確に理解し、的確に回答する
- 論理的で分かりやすい説明を心がける
- 知らないことは正直に認め、わかる範囲で答える
口述試験は、単なる法律知識の暗記ではなく、法的な推論や分析、そして表現力などが総合的に評価されます。
したがって、準備においては知識の習得だけでなく、それを的確に表現する能力の向上も重要です。
また、口述試験では、将来の法曹としての適性も評価されます。
予備試験口述試験に向けて準備を進める皆さんに、心からの健闘を祈ります。
LINE特典動画では、私が提唱する「解法パターン」とその活用方法の一端をお見せします。
動画①では、「判例の射程とは何か」を予備試験の過去問を題材にしながら分かりやすく解説します。この解説を聞いた受講生からは「判例の射程の考え方・書き方がようやくわかった!」との言葉をいただいております。
動画②では、試験開始前に見ることで事案分析の精度が格段にあがるルーズリーフ一枚に収まる目的手段審査パターンまとめです。
動画③では、どの予備校講師も解説をぼやかしている生存権の解法を明確にお渡しします。
そして、動画④では③の生存権の解法パターンを使って、難問と言われた司法試験の憲法の過去問の解説をします。
是非、解説動画を受け取って、世界を変えてください。